清冷の朝に

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  きっかけはほんの些細なことだった。 「今日からかみさんと子供が実家に帰っててさぁ。近くの遊園地に行ってくるんだって。俺、置いてかれた」 そう言って自虐的に笑う彼に、軽い気持ちで声をかけた。 「除け者になっちゃったんですか。可哀想だから、飲みに付き合ってあげますよ」 「お、いいね。他の奴らにも声を掛けてみるよ」 でもその日は平日ど真ん中で、メンバーが集まらなかった。 しょうがなく二人で小さなもんじゃ焼きの店で乾杯した。 二人、というシチュエーションが初めてなせいか、もんじゃ焼き屋さんなのにドキドキした。 千鳥足の二人が話しながら歩くと何度も肩がぶつかる。 どちらからともなく、手を繋いだ。 「なんかヤバいかも」 「…ですね」 彼が笑いながら言うから私も笑いながらそう言ったけど、もう予感はしていた。 …「恋愛感情がない」なんて、もう言ってられなかった。  
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