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少年は自分でもわけがわからない気持ちに押し潰されそうになりながら駆け出した。
何度か通っているはずの道なのになぜか、転んだ。
何度も、何度も、見たい気持ちとそれと反対の気持ちが
ぶつかり膝が震え出す、いつもより長い時間をかけて村の入口にたどり着く。そこはもはや、村ではなかった。
地獄と呼ぶに相応しい場所だった。
家の一軒,一軒からでた火柱が天に食らい付き、村全体が火の海だった。
何かが焦げる匂いと熱気が喉を縛り付け、眼を焼く……
「アリーッ!ゲホッ、ガホッ!!」
叫んだ反動で、吸い込んだ煙が体をじわじわと焼いていく。
「ゲホッ、ガホッ」
炎に負けて思わず下を向いたとき、少年は、見てはいけないものを見てしまった視界を埋める憎々しい赤色の合間でのたうちまわる人の形をしたものを……
「あ、あ、あ、あぁーーーーっ。ゲホッ、ガホッ」
一歩、二歩、倒れるような勢いで走って、走った。
『グォぉぉーーーー』
後ろから怪物の声が追ってきた皆を奪った怪物の声が…
「げぼっ、がぐっ、あァーーーーー----っ」
誰かが叫んでいる……
そう気付いてから
しばらくしてそれが
自分だと気付いた。
ようやく、
止まらなかった足が
止まり少年は倒れた、
そして、また走り出した、誰かに知らせようと……
少年は混乱していた。でも彼の中にはこの事件を冷静に見ている自分もいた。
彼はこのことを事件だと考えていた。逃げる途中で民家に焼き付けられた印しを見付けたのだ。それはどこか見覚えのあるギルドの印しだった
ならば、父さんが何とかしてくれる。この国の国任ギルドの長の父さんが……
熱さと疲れが少年の頭を麻痺させていた。少年は気付かなかったのだ。父さんは自分をギルドから遠ざけているのになぜギルドの印しに見覚えがあるのかということを……
それから二年後、より少しだけ強くなった少年は……
国任ギルド・滅殺商会から脱走する……
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