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クリスマスプレゼントに豪華なパーティー料理。下準備は万端、私の出番はここまで、後はパーティーの片付けくらい。
それまで少しはゆっくりさせてもらおうかしら。
そう計画した直後、
「ジュリアさん!大変です!」
下働きの中でもかなり下っ端の男が慌てて裏に入ってくる。
「なによ。私今から休息よ?」
「わかってますよ!でも、緊急事態で!」
「はいはい、で?何?」
どうせ高価な皿を割ったとかそんなとこだと思って適当に内容を聴く。
「実は、今日余興で来る予定の劇団のヒロイン役の娘が、高熱で倒れた上に捻挫までしたみたいで、」
「ふぅん、そりゃ大変ねぇ。」
余興なんて関係ないじゃない。
そう考えて休息の準備をしながら水を飲もうと自分のコップを持った。
「で、ヒロインはギリギリ代役がいるけど、その代役が劇でもともと役があるらしくて、その役をジュリアさんに頼めないかって」
ガシャーン
思わずコップを落としてしまった。ああ、後で片付けを…
じゃなくて!
「はぁ?!代役?!こんな薄汚れた女にできるわけないじゃない!」
「でもここらは貧民街の人間か、使用人のどっちかしかスカウトできないって劇団さんが!しかも、ドレスアップしてばれないようにしっかりメイクもするって!」
ドレス…メイク…今まで無縁だったものに心が惹かれる。
だめよ、これは甘い言葉じゃないっバレたら大変!劇団もただじゃすまないし私も…
「やるわ。」
考えと反した言葉が出る。そんなにもドレスとメイクが魅力的だったの私?!甘い言葉に騙されちゃったの?!
…あーー!そうよ、一度くらい良いもの着て美人になってチヤホヤされたいわよ!
「まじですか?!もう宿舎にいるみたいなんで知らせて来ますねー!」
心の中で葛藤するうちに男は嬉しそうに走って行ってしまった。
「あ!ちょっとま…」
もちろん声は届かない。
はぁ~、私のばかぁ~!
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