0人が本棚に入れています
本棚に追加
定食の暴走
それから一週間後、あれだけ固い決意をしたというのに、今の私は彼女の定食のことしか考えられなくなっていた。
お互いが家庭持ちで相手は友人の妻だ。
そう思い我慢してきたがそろそろもう限界だ。
何の因果か今日の友人は一週間前と同じ『トンカツ定食』だった。
私が愛してやま……いやいや違う、違うんだ。
私は妻の定食を愛しているんだ。
よし、妻の定食を見て落ち着こう……
「……」
だがまたしても妻は期待を裏切ってくれた。
野菜以外の食材が全く見えない。
DVかと思うほどの緑一色である。
だが一時の色恋で手放してしまっていいのだろうか……
「トイレ行ってくるわ」
何という神の悪戯だろうか。
友人はトイレに向かったのだ、『トンカツ定食』置いたままで!!
自然と私の手は『トンカツ定食』へとのびる
「ああ…『トンカツ定食』ぅ――」
「ハァ ハァ ハァ……」
罪の意識が体中を駆け巡り背徳感が手に汗をかかせる。
「!!!」
無意識に握った拳で光り輝くモノ
「結婚―――指輪」
フッと魔が下りた。
だが、本当の試練はここからだったのである。魔が下りるのとほぼ同時に私の肩に触れた人がいた。
「今日も喰べてくださらないんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!