第一章 第一節

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  白次は胸で十字を切り、十字架に向かって丁寧にお辞儀をすると、光輝の方へと向き直って不思議そうな顔をする。 「そう言えば、美香(ミカ)ちゃんは一緒ではないのですか?」 美香というのは、先程彼の部屋に飛び込んで来たシスターのことである。 斗篠(トシノ) 美香。光輝の幼なじみであり、同じ学校のクラスメートという腐れ縁である。親の影響もあって幼い頃からこの教会に出入りしており、現在は親元を離れ、この教会に住み込んで聖職を学んでいる。 「あいつなら、時計に祈ってるよ」 「はい? やはり不思議な子ですねぇ、彼女は」 苦笑する白次に笑みを返していると、階段から噂のシスターが下りてきた。 腕にはやはり壊れた時計が抱えられており、そこで再び彼らが笑ってしまったので、美香は不思議そうな顔を二人に向けながら首を傾げた。  
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