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そして間の悪いことに、今日は『聖歌祭』というイベントのため、神父である白次やシスター達は全員、大聖堂のある都会の教会まで出向き、神に捧ぐ歌を披露する。無論、光輝は聖歌など歌えないので行く筈も無い。
――どれだけ練習したところで、本場ヨーロッパのグレゴリオ聖歌団を超えられるとは到底思えないし……。
兎も角、そんなイベントがあるため、白次やシスター達は夜まで帰らない。勿論、シスターである美香も学校が終わってから、直ぐにそちらへと向かう。
つまり、書庫の清掃をする要員は、光輝を措いて他にいないのだ。しかし無駄に広い書庫を一人で清掃すること程、寂しいものはない。
「あー……今日忙しいなら、明日やれば?」
「ふふふ。勿論君が、聖歌祭で疲れ切ったシスター達に、翌日の朝から働けなどと鬼畜なことを言えるのであれば、話は別ですが」
「うっ……」
勿論、光輝はそこまで鬼畜にはなれず、結局諦めたように深い溜め息を吐く。
「分かったよ……やっておく」
「先程も言った通り、できる範囲で構いませんからね。では、よろしくお願いしますよ」
白次は彼が承諾することを知っていたかのように、にやにやと笑いながら彼の肩を二三度叩いた。
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