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物語は、ジャンヌの18歳の誕生日の朝から始まる。
パリの町。壁の隙間から光が差し込み、朝を告げる。
ジャンヌはいつものように、ボロボロの薄い布団を撥ね除けた。
一つのパンをアンリと分け合う貧しい食事。
それでもジャンヌは、
「お誕生日おめでとう、姉ちゃん。いつもありがとう!」
というアンリの言葉と手渡された小さな花にささやかな幸せを感じる。
その後、二人そろって、小さな頃から通っている教会へ。
教会で聖職者として働くシェイエスは、ジャンヌに祝福の言葉を述べる。
そして昔からしてきたように、彼女の頭を撫でた。
もう子どもじゃないんだからと言うジャンヌに、
「幾つになっても、私にとって貴女は愛しい娘のような存在ですよ」
と微笑むシェイエス。
仕事先のパン屋へ向かうため、ジャンヌが教会の裏口から出ようとすると、見知らぬ男に話しかけられる。
「シェイエス殿に伝えてくれないか。ロベスピエールが来たと」
ロベスピエールと名乗る、どこか冷たそうな印象の男は、静かに教会へ入っていった。
そういえば、最近、知らない人がよくシェイエスを訪ねてくるような気がする。
ふと、そんなことに気付くが、仕事が始まれば、考え事をしている暇なんてない。
パン屋の仕事と言っても、売るだけではなく、重い小麦粉の袋を運ぶことなどもしばしば、これはなかなかの重労働である。
一日の仕事を終え、ほっとしたのも束の間、店の主人に突然、減給を告げられる。
「お前さんの働きが悪いわけじゃあねぇんだ。小麦粉不足でな」
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