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ハノイには幼い頃の記憶がない。覚えているのは名前、年、誕生日。それだけは何故だか記憶していた。
物心ついた時からこの街にいた。もうすぐ14歳を迎える。
この街ではスリ、強盗が日常的であった。家に赤子を置いておけば攫われ、その子の運命は売られるか、餓死するか、犬にかみ殺されるか…。
ハノイはランダという男の元で働いている。ランダはこの街を統べる大悪党で、ハノイが彼から任された仕事は旅人から金目のものをスること。そのすばしっこい動きが買われたのだ。しかも、彼女は受けた仕事を一度も失敗したことがない。
本日のお目当ては、目の前を歩く黒い服を着た旅人。腰に剣を佩いているが、千鳥足だ。金目のものは持っていなさそうだが……見つけた!
あの腰巾着には2フィアーラの音がする。
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