第2章 出会い

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ちょうど、浦本駅に電車が滑り込んだ。 さっきの少女と彼女達がどうなるのか気になったが、こちらは遅刻寸前の身だ。このまま改札を走り抜けて、今来ているであろう市電に乗り込まなければ、確実に遅刻なのだ。 真哉は定期を駅員にチラリと見せて改札を駆け抜けた。上下の列車が同時に到着したから、結構人は多い。そのあい間を、見事に誰にもぶち当たらずに駆け抜けて行く。 自慢じゃないが、これも虐められているうちに身につけた技だ。 市電(市営電車ではなく市内電車の略だ)は、ちょうど真哉が飛び込むと同時に、フードゴングを響かせて電停を離れた。 車内はすし詰めで、真哉はドアに押し付けれれる羽目になった。 ――やれやれ…まぁ、しかたないか。もっと早起きできればいいんだけど。 ゴロゴロという車輪の音が車内に響く。 真哉はなんとなくこの音が好きだ。 「次は、浦本高校前、浦本高校前」 アナウンスと同時に、真哉は降車ボタンを押した。 チーンと高らかにベルが鳴る。 『キュルキュルキュルギィィィィ』 雨が振っているからだろうが、いつもにもまして、ブレーキの音が喧しい。 効きも悪いらしく、新人らしい運転士は、やや停止線をオーバーして電車を止めた。 真哉はそんなことは構わず、IC定期をかざして駆け降りた。 『キーンコーンカーンコーン』 予々鈴と同時に校門に滑り込む。この時間までに校門を通過しなければ、遅刻となる。 ――セーフ!
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