プロローグ

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東京の古びた団地に、放置されたような、都電。 東京から、路面電車が消えて50年。 かつてはあちこちにあった、団地の廃電車も、ほとんど全てが鉄屑に変わっていた。 たった一路線、残った都電も装いを改め、自分と同じ塗装(ふく)を纏った電車がすっかり消えた今、この都電はいったい何を思っているのだろう。 幸いにも、彼の保存状態は良好だ。 窓ガラスは全て健在で、電灯もちゃんと灯る。 同じように、団地の遊具や集会所となった都電たちが通ったのと全く逆の生涯を過ごしていた。 休日や午後、子供たちに囲まれる都電は幸せそうにすら、見えた。
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