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青年の腕にしっかりと抱えられた少女。暫く状況が掴めずにいたが白い頬が夕焼けの色とは違う朱に染まっていく。
「高い所苦手なんだろ?ああやって抱えるほうが安定する」
そんな気遣いも、ぶっきらぼうだが優しい口調も嬉しかったのだが、如何せんそんなふうに扱われたことなどないため、どう反応していいのか解らない。
独りで旅をしていた頃、何度かロリコンと呼ばれる類の男たちと対峙したが。連中の目当てはリリアの身体だけ。
ピアスを外すこともなく体術のみで気絶させたこともしょっちゅう。
「ありがとう、ね」
ふわっ、と青年の腕から身軽に離れると、ようやくそれだけの礼を言った。
「どう致しまして、マイ・マスター」
もうちょっと抱えていたかったが。
ルイシュタインの茶化しなのか、はたまた本気なのか、ごく小さな呟きが少女に届いたかどうかは……今でも彼にしか分からない。
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