99人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
青年と少女は、二人並んで惨劇の地へ黙祷を捧げる。
「さて、この現場はどうするかねぇ」
確かに他の人間や臭いを嗅ぎつけた“昏きもの”が、この惨状を見つけて騒ぐと色々な意味で厄介が生じる。
「陰契課に依頼?」
陰契課。
それは各警察機関におかれた、異形の生きものが関わった事件が起きた場合に色々な調査も兼ねて事後処理をする、公的な機関の名称。
「知ってるのか?」
精悍だがどこか柔和な瞳をほんの少し丸くしながら頭二つ弱程小さな隣の契約主を見て訊くと。
「まぁ……ね」
その返事には何故か先程までの覇気はなく、疲れたのだろうかと心配になる程。
「あんまり気ぃすすまねぇが……仕方ねぇか」
今回の件、生き残りの顛末などを少女が綴る間に青年が再び霧を発生させ、鷹に変化させた。
その脚に手紙を巻き付け空へ放つ。
それは優雅に翼を広げると、ものの数分と経たないうちに主のもとへと戻り、小さなメモを残して姿を消した。
最初のコメントを投稿しよう!