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その大きな掌に残された紙片を開き、ルイシュタインが少女に向かって頷く。
その表情は委細承知を物語っていて、リリアもほっと安堵のため息を落とした。
「長い一日だったな」
体躯に見合った、それでいてすらりと伸びた両腕を組んで肩をほぐす。
「そうだね……あとはあの子が少しでも幸せでいてくれたら」
「まぁそこは信じていくしかないだろ」
頬にかかる髪のすそを微風に遊ばせながら彼の言葉に頷き――表情は再び静かなものに戻ってしまった――は陽が西に傾きかけた空を見上げる。
誰かとこんなふうに夕陽を見ることなど久しくなかった彼女の心にあたたかな光が燈る。
それは青年にとっても同様で。
いつまでも眺めていたいその色をしっかり各々の心にしまって昼間とは表情を変え始めている大きな隣街へと二人で歩き始めた。
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