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慈愛に満ちた表情ではらはらと涙を零す少女の細い肩を撫でる。
その手のあたたかさと思いやりに、声を押し殺しながらも泣いた。
「辛いなら……無理しなくてもいいのよ」
それこそ修道院の中では母の立場。
誰であろうと必要なら本気で叱り、向き合う彼女が見兼ねてそう言ったほど、リリアへの苛め………すでに迫害に近いそれは熾烈だった。
しかし少女のプラチナ色の髪がゆっくりと、確かに横へ揺れる。
「シスター、私は負けません。この眼の色をひとが怖れて嫌がるのなら、隠して生きていきます」
まだ子どもらしさの残る手の甲で少々乱暴に目元と頬の涙を拭う。
そのまま強く前を見据える姿は彼女の素を知る者には健気ながら心に少し痛い。
「あらあら、そんなに擦ったら明日にはまぶたが腫れてしまうわ」
複雑な感情を微塵も感じさせないそんな言葉。
ようやく少女に普段の顔が戻ってきた。
ほんの一瞬だけ『母』にしか見分けられないほどのわずかな笑顔を覗かせて。
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