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暗闇の中、青年はテンガロンハットを右手で押さえながら細い路地を走り抜ける。
(……敵は、足音からして三人)
身を隠しながら小さくそんなことを呟く彼の頬を銃弾が掠める。
(所属も確認せずにいきなり発砲……やれやれ、その辺のチンピラと同類か)
その言葉を口にする前に、男は路地の中央に飛び出す。死を覚悟した行動だと思ったのか、追跡者達は笑みを浮かべた。
「降伏か抵抗かを選べ。……まあ、お前らは抵抗しか選べないだろうがな」
銃弾が雨のように降り注ぐ中、青年は前進する。銃弾をギリギリまで引きつけて紙一重でかわしているのだ。その化け物じみた反射神経と度胸に、追跡者達は驚きと悲鳴が混じったような声をあげた。
テンガロンハットの青年の首に巻かれた赤いマフラーが動きに合わせ作り出された風に靡く。
「残念ながらこちらは発砲許可は得られていない」
その言葉とともに一人目の後頭部を右肘で打ち、続けて二人の男の左胸を正拳突きが捉えた。打撃音と小さな悲鳴が閑散とした路地に響く。
「……最後はお前だな」
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