人ってさ、何のために生きているんだろうね

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――俺は村で唯一の中学校、川上中学校に通っている。 校舎は数年前に村の特産であるカラマツを使ってすっかり建て直したばかりだから、とても綺麗だ。 でも、あと一年もしないうちに、俺たちはここから卒業する。 今日で1学期も終わるというのに、俺の手にはまっさらな『進路調査票』が握られていた。 なんだかんだ理由をつけて、先延ばしにしていたのだけれど、ついに先生に捕まってしまった。 一人だけ教室に残されて、俺は担任の林先生と対峙して座る。 「遠藤だけだぞ、調査票出していないのは。だから悩んでいるなら、ちょっと話を聞こうと思ってな」 目の前では先生が俺の成績表を神妙な面持ちで眺めている。 自慢じゃないが、それなりに成績はいい。 理科だったら学年で一位になったこともあるぐらいだ。 だけど……。 「別に、悩んでなんていないです。ただ、どの高校にも行きたくない。っていうか、どこでもいいっていうだけで、書くことがないんです」 先生は困ったように頭をかいた。 「お前なぁ、何かなりたいものとかないのか?」 「ないです」 「じゃあ、家を継ぐのか?」 「そのつもりもないです。いいです俺は普通のサラリーマンで」 耳障りだと思うほど、先生はわざとらしくため息を長くつく。
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