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「……寒」
吐く息が白くて、手袋をした手に吹き掛けた。
12月も終わりに近づくと、学校帰りももう薄暗く…
灰色の空は、
今にも雪が降りそうだった。
美羚さんが全国ツアーに行ってから、一月。
他の仕事もあるから戻ってはくるけども、流石に2人で逢う時間はなかった。
…それでも、
1日に何通と送ってくれるメールや、
何故か美智子さん直々から送らされてくる写メがあるから、寂しくて苦しいという事はなかった。
「今日はどこにいるんだろ…」
美羚さんには美羚さんの世界があるから、
大輔さんが教えてくれると言ってくれたスケジュールは断った。
それに…
休みの日とかあったら、逢いたいって願ってしまうから。
それでも、
同じ蒼空の下。
この蒼空の下には、美羚さんがいるから。
だから、大丈夫。
「あ?柚茉じゃねーか。今帰りか?」
「賢吾さん?何してるのんですか?」
「配達。乗ってけ、丁度お前に用事があったんだよ」
「…?」
仕事に使う軽トラックではなく、賢吾さんのセダンに首を傾げながらも…
お言葉に甘える事にした。
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