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舞台は現代。
昔に比べ、背の高い建築物が肩を寄せ合う世。
その中でも一際高いビルの屋上に一人、独特な服装で立っていた。
闇に紛れるためか、黒に近い服に口元を隠す布。
首に巻かれたマフラー状の布と肩ほどまで眞紅の髪が風に靡いていた。
「今日も多いね・・・紅夜」
口を開いた人物の名は 朱宮緋蘭(あかみやひら)。
朱宮家第15代目次期当主である。今年で19歳になる大学生である。
表は大学生。裏は忍御三家朱宮家の長女であった。
緋蘭の周りをふよふよと体長30cmほどの朱色の和金が宙を泳いでいた。
名は 紅夜(べにや)。古来より忍たちの相棒とされてきた忍び魚(しのびざかな)である。
〝今宵も楽しくなろうぞ〝
「お前だけな」
忍は1000年ほど前から暗殺とモノノ怪退治を専業としてきた。
忍たちの頂点に君臨していた御三家を始とし、現代までに日本各地におよそ300家存在している。
しかし、時代を重ねる毎に本業としていた暗殺業は減少していた。今ではモノノ怪退治のみの他に裏の掃除屋をしている。
要は表の世の秩序のためのバランスを取っている。
〝何、我の食事の時間なだけではないか〝
忍び魚は代々それぞれの家に各一人の忍が必ず1匹、産まれた時に与えられるモノノ怪の類である。
朱宮では和金タイプの忍び魚だ。
忍び魚は裏(闇)に生きたものの残骸を餌とし、凶悪なものほど美味としている。
残骸にはモノノ怪、人、動物など魂を失ったもの全てが対象である。
また忍び魚は忍が感じとれないものなどを感知したり、書を届けたりと多種多様である。
「今日のは美味しくないかもよ。数だけ多いから」
〝満腹ならばそれで良い〝
緋蘭はダルそうに手で印を組むと深呼吸をした。
見下ろすとキラキラと輝き続ける町並みに目を細めた。
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