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「じゃ、行ってきまーす」
緋蘭はジーパンにパーカーという出で立ちでリュックを背負う。
「いってらっしゃい」
“お気をつけて、緋蘭様”
小さく手を振る母の横にヒラヒラと紫翆が宙に浮いている。その横を紅夜がすいーっと通り抜ける。
“今日は我も行こう”
「あれ、珍しいね」
普段、紅夜は家の壷の中で緋蘭の帰りを待っている。
“昼の空気も良かろう”
スポッと緋蘭のリュックにつけられた小さな万華鏡の形をした筒に吸い込まれる様に入っていった。
「今日はどうするの」
「悠里と雑貨屋に行く約束してるから…多分7時くらいには帰る」
そういうと緋蘭は玄関を出る。こうしてみると緋蘭もごく普通の大学生だ。門を出るとポケットから音楽プレーヤーを出し、イヤホンを耳に捩じ込む。
“危ないぞ”
「(大丈夫だってば。忍の娘を舐めないでよね)」
緋蘭の頭の中に紅夜の声が響く。普段は普通に会話が可能だが、テレパシー染みたことも可能なため、端から見れば緋蘭が独り言を言ってる不審者にはならない。
「(何かあれば紅夜がいるでしょ?)」
“ふん、口の減らぬ奴よ”
ふふ、と笑うと緋蘭はスキップの様な足取りで学校を目指すのだった。
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