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ファッションビルE、六階楽器店、貸しスタジオ
「さーて、やりますかやりますかノリさんよぅ」
俺は修理のから帰って来たエレキギター「エレファント」を抱えてノリノリだった。
「何をだ、博?」
頭に疑問符の則定。
「釣れないねぇ。『ブルーに泣いている』をやろうぜ」
「おぅし、やりますか!」
互い乗る気だ。
「じゃ、そっちの準備は良いか、ノリ?」
「よし、やろうぜ博」
「1、2、1、2、3、4」
俺達はツインギターで愁いを帯びたメロディーを奏でる。
過去に抱いた思い出は冷たい街に粉々になって行く。その砕けた心のありかは分からない。自分の心を映す鏡が映しているのは自分の恋に疲れた背中。自分は一人で生きて行けるのに心は誰かを求めている、何故だろう。答えを求めたが分からず、風は静かに泣いて去ってゆく…。
こうして気の向くまま三時間、あっという間、幸せの時間が流れゆく。
「…高いな、博…」
「嗚呼、学生には辛いぜ…。アルバイトしてもよ…」
「親父に頼んでみるか、給料の事?」
「いや、申し訳ないから…」
会計。何とも辛い時間である。
「じゃあ、此れで…」
割り勘。
「毎度有難う御座います」
店員のマニュアル挨拶。
貸しスタジオの代金を払って俺達は暗くなった外へ出た。
「一か月に一回とは言え、お年玉飛んだわ…」
「ふはは、仕方ないよ、博」
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