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「やっぱり!覚えてますか?あの、稲森日南子(イナモリ ヒナコ)です!!」
ひなこひなこ…、やっと思い出した。懐かしい名前だ。
「久しい、ですね」
癖で敬語になる。
「あの、三年間会ってなかったけど、元気でしたか?」
日南子。
「お、おう」
頷く俺。
「私、講習の帰りだったんです。あの博君は?」
「俺は、ギターの帰り」
「そう言えば、中学の学校祭の時、一人で弾いてましたね。私も聴きました」
「お、おう…」
何だ、一体。
でも此奴とは少しばかり特別な関係だった。日南子は小学中学で数少ない俺の理解者だった。でも高校はバラバラ、連絡先も知らないで早三年近くが経過しようとしていた。こうしている間に特別な関係はどんどん風化していき、気付けば忘れ去られる寸前だった。
「あのさ、稲森」
そう呼んだ時
「昔みたいに日南子で良いよ」
日南子にっこり。
ヒ!こっちは恥ずかしくなる。
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