分身

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押入れが開いていた。 記憶を辿れば衣類や折りたたみテーブル、その他もろもろがぎっしりと詰まっているはずだったが。 そこには黒く影が渦巻く空洞の空間があった。 気だるい泥のような身体を起こしやっとの思いでその現場前まで歩み寄って中を見た。 捲れたタオルケット、その下には夏物の敷布団。 押入れの隅には筒状のプラスチックとビニール袋を合わせてゴミ箱の役割を果たす物。 その中には数日前保存食として購入しておいたポテトチップスかっこコンソメ味かっこ閉じ、がくしゃくしゃに丸められたものがあった。 その光景はある異様な生活習慣を送る者の暮す奇妙なネグラを思わせた。
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