分身

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 ◇ 朝飯もままならないまま俺は家を出た。 どうせ始業式だ、なにもそこまで構えなくても良い。 商店街を抜け母校である小学校が右手側に現れる。 遠くに見える大人数のランドセルを背負った小学生を見て「まるでゴキブリの群集だな」と思い、その中のあるゴキブリがジャムパン片手に登校中なのを見て今更ながら腹の虫が鳴る。 それらを過ぎた後五分、入学から一年お世話になった何所にでもある校舎とそれを囲うように立ち並ぶ桜の木を見て、あぁやっぱり春なんだなとしみじみ実感した。 桜の並ぶ学校の横の通りを抜けて門を潜る。 溢れかえる自分と同じ配色の制服を着た人ゴミを目の当たりにし、またあの害虫の名前が頭によぎる。 掻き分けて昇降口を目指す。 その先にはさっきの人ごみより、一層密度の高まった群集があった。 もはや寒天培地の細菌類だ。 何事かと思い思考しながらそれらの中心に目をやる。 頭が答えを出す前に視覚情報が先にクラス替えの張り紙という答えを出した。 あ、そうだ。 俺今日から高校二年生じゃないか。 そうと分かれば他人事ではない。 群集密度の薄くなった所に身を投じ、それを繰り返して深部に辿り着く。
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