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◇
前から何度か山下を自分の部屋に上がらしたことは何度かあった。
その合計回数は二桁にもならないが。
ただいまと社交儀礼のように勝手に口にする。
山下も習ってお邪魔しますと言った。
「よう、兄貴。友達とは珍しいな」とセリフがかった口調で同じ学校の制服を着た妹がリビングと廊下を繋ぐ扉からひょっこり顔を出して言う。
無視して階段を駆け上り二階の自室の扉を開ける。
「これ、怖くねえか?」
押入れのふすまを指の腹で押さえつけてスライドさせて中身を展開させて見せる。
その中は朝のあの奇妙な生活スペースの後があった。
乱れたタオルケットとその下の敷布団。
それをみた山下は「ドラえもんごっこか?」といって中に首を突っ込む。
「なわけねぇだろ」と言って腕組みをしてその山下の姿をなんとなく眺める。
「天井には蛍光ペンで星が描かれてない。アマガミごっこでもないな」
「わけわかんね。なんだよそれ」
あるアニメだ、と補足して山下は押入れを上下二つの空間に分ける棚のような部分に足を上げ、そしてかける。
もう一つの足を浮かし、その次には中に転がり込んでいた。
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