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「お、おい。何入ってんだよ」
「まあまあ。こういうのは入ってまでして徹底調査だろ」
罰当りが。
もしこの押入れを利用する本人が帰ってきたらどうなることやら。
というよりこの押入れを利用している本人は一体誰なんだろう。
得体の知れない使用人。
疑問が体験したことの無い恐怖に摩り替わる。
もしかしたらそいつは何時か俺の命を奪う存在なのかもしれない。
そしてこの押入れという俺に近い位置に隠れ、その時を待つ者ではないかと悪い方向に想像が膨らむ。
特になんもねぇ、そう言って山下は押入れから大きな着地音を鳴らして出てきた。
「この押入れ、ちょっと前までどうなってたんだ?」
衣類、布団、あと大型の家具かなにか。
そういったものが思考停止で投げ込まれるのがここだと言うと山下は「その家具の行方もどうなったんだろうな」とまた面倒な問題を口に出した。
「とにかく気持ち悪いからさ。推測でいいからどんな人間が使ってるかだけでも分からないか?」
顎を人差し指で支えた山下は唸ったのち「分からん」と言った。
悩み相談をする割には答えらしい答えは出てこない。
それが山下の特徴でもあったことを思い出した。
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