story1

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「……いや?別に何もされたわけじゃないけど…。逆に僕が迷惑かけたのに、ごめんって謝ってくれたし…。」 うん、逆に凄くいい人だと思う。 けれど世間一般の評価は、どうやら僕が思っているのとは全く違っていたようだ。 「何もされてないなら別にいいんだ。けど、あいつ、凄まじいらしいぜ。」 そう言って前置きをして、桜庭さんは次々に転校生の所業を上げ始めた。 曰く、出会って早々に生徒会メンバーに、よく言えば超フレンドリー、悪く言えばとても馴れ馴れしい態度をとったそうで。それが、生徒会の親衛隊の逆鱗に触れてしまったらしい。そのまま親衛隊の方々と対立。昼休みには、ちょっとした一悶着があったらしい、とか。 曰く、非常に世間を知らない方のようで。出会った人は皆お友達、というトンデモ思考らしい、とか。 曰く、実は学校の御偉い様の関係者らしく。敵にまわしたらヤバいらしい、とか。 曰く、実はアブナイ方々との交流があるらしい、とか。 他にも色々あるらしいけど、途中で僕が遮ってしまった。 なんというか、殆ど眉唾もののような気がする。 「よくまぁ、これだけの噂知ってたよね。」 笑いながら言った言葉には、苦笑いで、まぁな。と答えてくれた。 まるで、噂大好きな奥様方の情報網のようだ。あれは確実に、インターネットよりも速いと思っているのは僕だけだろうか。 それにしても、最後の方は眉唾ものだとしても、最初の方は結構な事実なんじゃないだろうか。火のないところに煙はたたぬと言うし。 だとしたら、結構転校生の彼は危ないかもしれない。 生徒会の親衛隊と、一口に言っても、その存在は穏健派と過激派の二つに分かれている。こう言ってしまえば、まるで何かのテロ組織のようだけれど、他に表せる言葉がないから仕方がない。 今回、親衛隊の逆鱗に触れた、ということはそれは、多分過激派の方々だ。 そうなれば、明日……とは言わず、もう今日のうちから何かしらの行動が始まっているだろう。 過激派の制裁は、その名の通り「過激」の一言に尽きる。肉体的、精神的、社会的にと様々な方法を使って徹底的に潰しに来る。それを、誰がやったかわからないように秘密裏にやるからまた性質が悪いんだ。 。
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