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「あれ。」
ここ数日、エレベーターが故障中のためエレベーターが使えず、心の中で文句を垂れながら寮までの長い長い階段を登る。階段を登るのは校舎だけで十分だ。何が悲しくて自分の部屋まで、ヒィヒィ言いながら行かなければいけないのだろう。
と、やっとこさ自分の部屋が見えた所で、部屋の前に妙に荷物が多いことに首を捻った。というより近所迷惑のレベルで段ボール箱が散乱している状態だ。
なんだろう、と段ボール箱を掻きわけドアを開けると、いつもは遅くまでいない同室者が出迎えてくれた。
「ああ、星。丁度いいところに。この片手なべ、星のだっけ?俺のだっけ?」
「近衛生徒会長。何してるんですか?」
片手なべを強調するように高く掲げているのは、僕の同室者でありこの学園の生徒会長、近衛吉輝だ。
が、その近衛生徒会長が何故片手なべを持っているのか。そしてその鍋の持ち主を聞いているのかが謎だ。
「え、えっと…その片手なべは僕のです。でも、なんで………?」
「ああ、そうか。星には言ってなかったか。」
皆まで言わずとも、僕の言いたい事を理解したのか、まぁ座れ、とソファを指さす。
残念ながら二つあるソファの一つは近衛生徒会長の私物で埋まっていたので同じソファに腰掛け、静かに話を待つ。
「転校生が来たのは、星は知っているか。」
「ああ、はい。」
お昼休みに会ったあの金髪の生徒の事だ。
「そうか。…元々、学年の違う俺と星が同室になったのは、どちらも相部屋になる相手がいなかったからだ。基本、部屋は二人部屋が基本だしな。」
あぁ、そうだった。最初の頃は結構、嫌がらせとか受けてたんだっけ。今でも僕の事を恨んでいる人は少なからずいるはずだ。
「で、今回転校生……九条秋良と言うんだが、星はその九条と相部屋にしようと、学園側からの御達しでな。それで急遽俺が部屋を出ることにしたんだ。」
「…成程。そういう事だったんですね。」
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