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久彩子が帰るのを玄関で見送ってからすぐさま、パソコンの前に位置付いた。
『名前を決めて下さい』
……名前、か。
考えるのは苦手だ。
どうするか……
と、カーテンの隙間から夜が覗いた。
……夜……
夜を心の中で呟くと、ふと、頭の中に一文字が浮かぶ。
『朔』
決めた。これにしよう。
カタカタカタッ
『朔夜(サクヤ)』
パソコンの入力画面、浮かぶその二文字。
『決定』
カチッ
俺は満足気にそれをクリックした。
今日から俺の名前は、『朔夜』。
誓いを立てる代わりに、自分に名前を与えた。
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