玩具の死因

14/14
7667人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
   久彩子が帰るのを玄関で見送ってからすぐさま、パソコンの前に位置付いた。 『名前を決めて下さい』  ……名前、か。  考えるのは苦手だ。  どうするか……  と、カーテンの隙間から夜が覗いた。  ……夜……  夜を心の中で呟くと、ふと、頭の中に一文字が浮かぶ。 『朔』  決めた。これにしよう。  カタカタカタッ 『朔夜(サクヤ)』  パソコンの入力画面、浮かぶその二文字。 『決定』  カチッ  俺は満足気にそれをクリックした。  今日から俺の名前は、『朔夜』。  誓いを立てる代わりに、自分に名前を与えた。  
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!