玩具の死因

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   これは誰かが作ったゲームだ、手品だ。 何も恐れることはない。  そう自分の納得のいく答えを呟き、赤字の『hell』にマウスポインターを運んでいく。  その時だった。  メール内容の中に『只のオンラインゲームデハアリマセン』という文章があったことを思い出した。  しかし、そう思わない限り、恐怖で足がすくんで進めないような気さえした。  得体の知れない恐怖。それが自分を蝕んでいく。  コンコンコンッ  ビクッ  部屋のドアがノックされる。  恐怖と向き合っている時だったので聴覚はかなり敏感になっている。 「……はぁ」  三回ノック。ということは恋人の久彩子(ヒサコ)だ。  とりあえず一安心しながらドアを開ける。 「久彩子、どうした?」  久彩子は不安気な表情を俺に向ける。 「……何も、起こってない?」  久彩子は俺のしようとしていたことを悟ったように、部屋の中を覗き込む。 「起こってないよ。……起ころうとしていたけど」  語尾は声のトーンを物凄く下げて誤魔化したつもりだったが、久彩子の耳にはしっかり届いていた。  
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