執着

1/7
前へ
/35ページ
次へ

執着

「――古閑くん」 「……なに?」 「あの、ね。その…」 「うん」 「相談があるの」 「俺に…?」 「そう、大事な話。誰にも言わないって約束できる?」 「もちろん」 「絶対にだよ?」 「わかってるさ」 ベンチに腰掛けた体が揺れる。 とても、華奢で少し触れただけでも壊れてしまいそうだ。 そうして、置かれていた俺の手を強く握り締めた。 それに一瞬、どきりとして横を向くとそこには。 いつになく緊張した面持ちの彼女がいた。 「…私、ね……」 「…………」 その日はとても穏やかで心地いい日だった。 春の木漏れ日に混じって、鳥が鳴く。 風がそよいで、枝葉が揺れる。 けれど、彼女の言葉が―― 「好きな人がいるの」 すべての音を奪っていった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加