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執着
「――古閑くん」
「……なに?」
「あの、ね。その…」
「うん」
「相談があるの」
「俺に…?」
「そう、大事な話。誰にも言わないって約束できる?」
「もちろん」
「絶対にだよ?」
「わかってるさ」
ベンチに腰掛けた体が揺れる。
とても、華奢で少し触れただけでも壊れてしまいそうだ。
そうして、置かれていた俺の手を強く握り締めた。
それに一瞬、どきりとして横を向くとそこには。
いつになく緊張した面持ちの彼女がいた。
「…私、ね……」
「…………」
その日はとても穏やかで心地いい日だった。
春の木漏れ日に混じって、鳥が鳴く。
風がそよいで、枝葉が揺れる。
けれど、彼女の言葉が――
「好きな人がいるの」
すべての音を奪っていった。
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