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テーブルに座っていたたっちゃんが南の後ろに来ていた。
「信用とかの問題じゃないよ。現実を見ると南の周りには誰もいなくなるの、寂しいよ」
目をギュッと瞑って涙を堪える。
たっちゃんの前では泣かないって決めてるから。
「朝、ママのご飯の匂いで起きるの。パパが“遅いぞ”って注意するの。でももうそんなことない。だってパパとママは死んじゃったから。南は親戚に人に引き取られたら一人なんだよ?」
「南は一人じゃないよ。俺がいる。俺がなんだってする。俺が南を夢の世界に連れてってやる」
たっちゃんが抱きしめてくる。
優しく包み込むように。
「南、大丈夫だから。少しだけ待っててほしい、俺がもう少し大人になるまでさ。そしたら南のどんなワガママも聞いてやる。それまで我慢してほしい」
たっちゃんの言葉は今までよりも優しくて、暖かかった。
「うん、わかった。でも南、あんまり待てないよ?」
「いいよ、それまでの約束にこれを受け取ってほしい」
振り向いてくれたのは小さなリングだった。
トップにヒマワリの細工がしてある小さな指輪。
「迎えに行くからさ、その時は結婚しよう?」
「うん」
そっとたっちゃんは南にキスしてきた。
END
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