女、現る

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「何見てんのよ?」 天井に張り付いている女がそう毒突いたのは、僕が眠りにつこうとベッドに潜り込んだ時のことだった。 僕は常日頃から感情を面に出さないよう心掛けていて、その時も悲鳴をあげたり失神したりすることはなかった。 仰向けのまま言い返す。 「ここ、僕の部屋なんですが……」 最寄り駅からリア充絶望間違いなしの徒歩20分。 森と化した空き地に囲まれ、夏になると図鑑にも載っていないような昆虫が室内で発見される。 気になる家賃は驚きの3万切って2万9千6百円(共益費込み)。 その名も『コーポ・ゼニナシ』
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