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「そういう事は早く言いなさいよ!」
顔を真っ赤にして矢継ぎ早に怒鳴り、勢い良く腰を下ろす。その後、周囲から小さな笑い声が聞こえてきて結衣の顔はさらに赤くなって、肩をすくめて小さくなっていた。
そんな結衣をよそに織姫はテンポよく壇上に駆け登り、中心にあるマイクのスイッチを入れ、数回軽く叩いてチェック。
「――はい、皆さんこんにちは!」
笑い声を吹き飛ばすような織姫の第一声に、ざわめきが一瞬収まって――
『こんにちはー!』
大物アイドルのコンサートのような返答が、会議室いっぱいに窓ガラスを揺さぶるほど強く響いた。
「おぉ~みんな、元気が良いね~! それじゃっ、文化祭実行委員の二人は壇上に来てください!」
織姫からの突然の“呼び出し”に、資料をチェックしていた優と奏太は驚いて、準備もままならないまま壇上へと急ぐ。
「はい、担当の二人が揃ったところで、わたしは会長席から見てるよっ。二人共がんばってね!」
「「 !? 」」
二人と入れ替わるように壇から下りていく織姫に、度肝を抜かれる。間違えたらどうしよう。とか、噛まないように気をつけないと。と思考が止まりそうになった優に対して、織姫が小さく「何かあったらこっちからフォローするよ」と囁いたのを聞いて、優の肩の荷が少し降りた。
一方で、奏太は実家がああいう家風だからか、特に緊張したような素振りは見せないでいた。
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