嘘か真か

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 目が覚めて目に入ったのは、見慣れた風景。毎日飽きるほど見ている、自分の部屋。 時計を見る。午前六時半。 いつものような朝。 朝食を食べながら、昨日の紙芝居のことを思い出す。あれは夢だったのだろうか。でもあの浮遊感を、何とも言えない感覚を明確に思い出せてしまう。じゃあ、あれは現実なのか? あれこれ考えながら朝食を食べ終わり、洗面所に向かう。そして、ふと鏡を見て。 「――――っ!」 驚愕した。 あの「かめ」の顔に見覚えがあったはずだ。 毎日見ている顔。紙芝居に描かれていた「かめ」の顔。紙芝居の前に座っていた着物姿の男の顔。紙芝居をしていた男の顔。今、鏡に映っている顔。 すべてが同じ顔だった。 自分の顔は驚愕を表しているはずなのに。 笑うところなんて欠片もないのに。 鏡の中の人間が、ニタリと笑った気がした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加