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「……っ!」
「装飾品を大事そうに抱えていた事に自責の念を抱いて頭をかかえていたナターリア・レリエフさん?もしおりましたら至急受付までお越し下さい。息子さんのスジョウ・ハクアくんがお待ちになられてま――って冗談です冗談です!」
二本の刀剣を担ぐその背中に僕がふざけて道化の台詞を投げかけると、レリエフは顔を赤面させながらこちらに振り返り、本差(ほんざし)である《セイクリッド・レイン》を鞘から抜き放った。
《セイクリッド・レイン》はレリエフの特殊能力である《蹂躙》の力を帯びた霊装のことで、あの一閃を受けたら災禍である僕でも――いや、災禍である僕だからこそ死んでしまう、謂わば対災禍用の武器だった。
「わっ、悪かったわね、装飾品を買い込んでしまって!でもそれで貴方に迷惑かけたかしら?貴方が死ぬのかしら!あぁ、そういえば貴方死なないのよね。なら脇差の二刀を使って切り刻んでも問題ないわよね!それに何で私が貴方の母親なのよ!私はこれでも十七歳よ!」
「出た!お得意の自己完結トーク!」
僕の態度によほど鬱憤が溜まっていたのか。レリエフは捲したてるように僕への不平を列挙する。その瑠璃色の瞳は殺気に満ち溢れ、本当に背中の剣で切り刻まれてしまうのでわないかと危機を感じる。
「わかりました、分かりましたんで抜刀したそれをしまってください、レリエフさん!死にますから。それ、災禍でも死にますから!」
僕は降参の旨を示すべく両手を耳元に掲げ激怒なされている救済者様に応対する。いや、本当に死んじゃいますから。冗談が過ぎたが故に二年の歳月を棒に振るとか洒落にならないですから。
「……全く、くだらないことで話しかけないでくれるかしら?そもそも発端は貴方なのだから、高々数分歩いたくらいで根をあげないでもらえるかしら。不愉快だわ」
レリエフはセイクリッド・レインを一閃、露を払うように凪払うと、その刀身が鈍色の旋律を奏で、やがてセイクリッド・レインは元の鞘に身を収まる。
轟音に紛れて囁かれたレリエフの言葉に意気消沈となってしまった僕はといえば、蔵に放置されっぱなしの葡萄酒のような渋い表情を浮かべて項垂れていた。
その雰囲気を感じ取ったのか、レリエフは僕に何か言おうと逡巡していたが、それは不発に終わてしまい、レリエフは屈託とした表情を浮かべながら踵を返した。
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