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そして何より目を引いたのは、やはり評判にも聞いていた太陽だった。日出した太陽は琥珀色の光源を放ち、悠然と浮上してゆく。水平線に近接している水面はその陽光と混ざり合い紫色に変色していた。
その光景があまりに幻想的で。僕とレリエフは時を忘れてその幻想に見入っていた。
ーーけど、それだけだった。
何故だろう。こんなにも美しい光景を目の当たりにしているのに、僕はどうしてもここが目的地である《最果ての境界線》には思えなかった。
理由なんてない。たた何となく僕の中の本能がそれを主張していた。
……よもや《最果ての境界線》はここに存在しないのだろうか?
僕は自分自身にそう問いかける。すると結論は簡単に出た。
きっと《最果ての境界線》なんてものは最初から存在しなかったんだ。あったのは無意味な旅の連続で、そうすることで災禍である僕は今こうして生き続けることができたんだ。
僕はそんな結論にいたっていた。
「……」
そんな葛藤を知ってか知らずか、レリエフは沈黙を保ち続けた。目の前に広がる光景に思いを馳せ、一瞬一瞬をその双眸に焼きつけている。おそらくレリエフもこの場所が《最果ての境界線》でないことに気付いていることだろう。そして、《最果ての境界線》が存在しないことも。
それでもレリエフは口を開こうとはしない。開いてしまえば最後、それが僕らにとって決別の言葉になってしまうことを知っているから。
約束は最果ての境界線を見つけるまでだ。けれどそんなことを言ってられるほど世界は安泰の道にない。
レリエフと最果ての境界線を探し出す旅に出て既に二年が経過していた。もしかすれば明日、世界が終焉を迎えても何ら不思議ではない。それくらい僕は延命してしまったていた。
やがて僕はレリエフとの間に敷かれた静寂を断ち切る言葉を紡ぐ。
「ところでレリエフ。君は今日が何の日か知ってるかい?」
「えっ?」
「クリスマス・イヴって言うんだってさ。僕には故郷の記憶がないもんだから、今日が何の日だったかは昨日まで知らなかったのだけど……。何でも、今日はどんな願いも叶う日なんだってさ」
正確には欲しい物をサンタさんに持ってきてもらう日のことらしいのだけど、ここでの僕は敢えてそれを口にはしなかった。
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