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『今日で世界が終わる』
皆、狂ったように口々にそう言う。馬鹿の一つ覚えみたいに。
世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる世界が終わる!
世界が終わるなら、いっそ終わる前に皆で一緒に死んでしまおう
今となっては誰が言い出したのか分からない。
大統領だったかもしれない。ただの一般市民だったかもしれない。働かずに親の脛を齧るろくでなしだったかもしれない。
だから、皆死んだ。“世界終末論”を信じていた人は全員。私以外の国民は全員。
だから私は血の海と化した、死体の山が築き上げられた道を歩く。当ても無く。
毒を飲んだ者。自分で首や腹をズタズタに引き裂いた者。家族や友人を残忍に殺して死んだ者。
私の父親は母親と弟を殺して、私も殺そうとした。
でも私は終末論なんて信じてないし、死にたくなかったから、父親を殺して生き延びた。
私以外、立っている者はいない。
哀しみも何も感じない。皆、馬鹿だ。
終末の日を迎えても世界は滅びない。
終末の日を迎えたのは、人類。
大統領邸から持ち出した予言書を開く。
大統領もだけど、これを見た人達は最後の文章をちゃんと読まなかったのだろうか。
しかし、どれほどの種が失われようとも、世界は完全には滅びず、世界はまた新たな種を育むだろう。世界は人類を滅ぼさないが、人類は人類を滅ぼす。人類が滅びるとしたら、人類が自らを滅ぼすのだ。
嗚呼、予言書の通りの結末になった。もしあの世があったら、この予言書を書いた人物は哀しんでるのだろうか。それとも鼻高々なんだろうか。
どっちでもいいか。私には関係ない。私は生き延びたんだから。
私以外の人類が生きているのかも興味ない。
とりあえず、食料を調達して死体のないところに行こう。
こんなところにいたら、病気になって死んでしまう。
なんとなく、死体だらけの街を振り返る。
そして私は皆に向かって口を開く。
ご愁傷様、気の毒に。私は終末の日を生き延びたよ。
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