11716人が本棚に入れています
本棚に追加
鈴音は、それ以降学校で亮の姿を探すようになった。しかし、鈴音が通う青風高校は県下でも有数のマンモス校。敷地面積も広いし、生徒の数だってべら棒に多い。なかなか亮の姿を見つけることはできなかった。見つけても遠くてすぐに見失ってしまう。
出会えたら何か話しかけたいと鈴音はいつも思っていた。でも、本当に彼が目の前に現れたら、きっと口を開くことすらできないだろう。
鈴音は、無意識に右手の親指を噛んだ。
…………
「りっぺ。その癖やめた方がいいよ」
いつの間にか、同級の夏海が隣に立っていた。『りっぺ』とは鈴音のあだ名。鈴音は、噛んでいた親指を慌てて下ろす。視線の先には亮がいた。グラウンドでサッカーを楽しんでいる。
彼が視界に入ると、ついこの癖がでてしまう。暖かい春の日差しが窓から入り、鈴音たちの頬を光らせていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!