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鈴音は「夏海はいいよね」と呟いた。「え? どういうこと?」と夏海が訊いた。鈴音はちらりと夏海のシャツを流し見る。
「胸大きいしさ……。それに彼氏もいるんでしょ?」
「うん、いるよ。りっぺは?」
夏海が即答して切り返す。
「まさか。いないよ」
鈴音がため息をついてうつむくと、夏海が前に回り込み、覗き込むようにして言った。
「もう少し自信を持ちなよ。りっぺって可愛いし、スタイルだって悪くないと思うよ。なんなら私が、亮先輩に、りっぺのこと頼んでやろうか?」と言うと、鈴音に肩を摺り付けながら「亮先輩のこと好きなんでしょ?」と訊いてきた。
「いや。その」鈴音の頬が熱くなる。
「ほら顔に書いてある」と夏海が言った。
「うそっ」
鈴音はびっくりして両手の指で顔を確かめる。夏海はそんな鈴音を見て、腹をかかえて笑った。
「とにかく、明日かけ合ってみるから」
夏海の性急な提案に、鈴音は焦って答える。
「だめだめだめだめ。私、絶対に無理」
丁度そのとき始業のチャイムが鳴る。夏海は二階のフリースペースから教室に向かって歩き始めたとき、夏海が、「そっか……しかたがない、やめとく」と言った。鈴音は「ありがとう」と答えた。
「話変わるけどさ、今日の部活見学いっしょに行かない?」
ちょうど鈴音も、どの部活に入るのか迷っていたところだった。
「うん、もちろん行きたい。誘ってくれてありがとう」
鈴音がそう答えると、夏海は二組の教室に入っていった。
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