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◇◇◇
やがて終業のチャイムが鳴り、部活動が始まった。鈴音は体育館の入り口で夏海と合流した。
夏海は、重そうな鞄を背負いながら「鈴音は見たい部活あるの?」と訊いた。
鈴音が「私は運動が苦手だから文化部かな。夏海は?」と切り返すと、夏海は「私はバスケ。小学校のときから、ここでバスケをすることが夢だったんだ」ときっぱりとした口調で答える。
鈴音は、夏海がはっきりとした目標をもっていることを羨ましく思った。同時に目標がない自分が情けなく思えてくる。
最初に二人は体育館に入った。メインアリーナではバスケ部が練習をしている。男子側のコートの壁には『部員 & マネージャー募集!』の文字が躍っていた。
夏海は「ひゃあ。かっこいい」と黄色い声をあげる。紅白戦がハーフタイムになると夏海が言った。
「りっぺ。男バスのマネージャーやってみたら」
鈴音は目の前で駆け回る男子部員の巨体を見ると、とてもそんなことはできそうにないと思った。
「だから私は文化部だって……」
鈴音は、男のむせ返るような汗の臭いがちょっとだけ苦手。
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