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恥ずかしくて唇を噛む。
一息吐いて私は家から飛び出てしまった。
カズキが本当に好きだった。
ガチな初恋で。
らしくないのに、バレンタインに手編みの赤いマフラーで告白しようとした。
『ねえ聞いた?悠里マジでカズキのためにマフラー編んでるよ。笑うっしょ』
『やめろよ、気持ち悪い。だいたいさ、手編みのマフラーとか悠里の怨念がこもってて気味悪ぃよ』
(ヤメタ、馬鹿ミタイ)
バカみたい。
馬鹿みたい。
バカミタイ。
なんであんな奴好きなの?
マフラーをぐちゃぐちゃにして私は公園で人目も憚らず泣いた。
泣いたら落ち着いて、吹っ切れた。
『お兄さん、雪が降ってんのになんでコート着てないの?』
『そういえば、そうだね。着るの忘れてた』
寂しそうに笑う彼が放っておけなくてぐちゃぐちゃにしたマフラーを首に巻いてあげた。
『誰を待ってるのか知らないけどそのままじゃ風邪ひくでしょ?だからあげる返さなくていいよ、私には必要ないから』
それから家に帰って、馬鹿カズキのことを妹に話したっけ。
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