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図書館内は読書と勉学の環境が整っており、丁度いい空調と集中出来そうな程に適度に静かだった。
が、千早の内情はそうでは無かった。
(ーーーー/////ッッ!!)
隣りに翔太が座っているからだ。
教室内より近い、肘がぶつかりそうな程に近い。
翔太の綺麗な顔立ちがいつもよりはっきり見える。
心臓がバクバクとうるさく、顔が真っ赤になるほど体温が上昇している。勉強どころではないのは仕方ない。
「ねぇ。青柳さん。ここ分かるかな?」
翔太がノートと一緒に体を密着させてきた。
(あわわわわわわ!!)
内心ドキドキしながら
「ど、ど、どこ?」
平常装い(自分ではそう思ってる)受け答えした。
ああ。この幸せな時間がもっと続けばいいのに…
と、思った瞬間
「おにーちゃん。これ読んで読んでー。」
脳天気な声でるしふぁが蜜の時間を遮った。
「っ!!?」
千早のハートにまたヒビが入る。
「あー。はいはい。ごめんね。青柳さん。」
やれやれと翔太はるしふぁを抱きかかえて膝の上に乗せる。
「えへへーー。これすごく面白そう。『哀れメロス(笑)』」
るしふぁはご満悦で絵本を机の上に広げる。
その様子を眺めていた千早はゆっくりと立ち上がり
「…ちょっと、お手洗いに行ってくるね。」
「え…う、うん。」
翔太の目に映った彼女の顔はどこか悲しそうだった。
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