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この国には救世主がいる。
姿を見た者はいない。声を聞いた者もいない。しかし名前だけは国民全員に知られている。
その者の名前は「ミナ」という。
性別は知られていないが、名前からすると女性かも知れない。
彼 ――― あるいは彼女が、しかしこの国の国民から絶大な支持を得ている救世主であることは間違いなかった。
この国の政治家は口を開けばこう言う。
「ワタクシ、当選の暁にはミナ様のために粉骨砕身努力する所存です!」
幼子は、大人たちにこうやってルールを教わる。
「ミナが決めたことなんだから守らなければならないんだよ。」
立身出世を成し遂げた人物は、こう言って誇らしげに胸をはる。
「今日の私があるのも、全てはミナ様のおかげです!」
救世主ミナ ――― それはこの国の民にとって、神にも等しい存在なのだ。誰もその姿は知らないけれど。
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