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昼下がりのマンションのリビング 洗濯物を取り入れる時に迷いこんだのか 足元に転がっている蝉を 美佐子は立ったまま見つめていた 開け放した窓からは五月蝿いくらい蝉の鳴き声がしていた なんて哀れな生物なんだろう 何年も地中で耐え やっと地上に出られたら 1週間しか生きられないなんて ……なんて哀れな そう思う美佐子の頬に一筋の汗がつたう 蝉は腹を見せたまま ヂヂ……ヂヂ……と鳴いて そのうちに動かなくなった
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