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「俺の弱点は確かに、同じ絵である神とかキリストだ。しかし、こんなヘタクソな絵じゃ俺を消すことはできないぜ」
オレは、とりあえず、キリストの絵をベンジンで消し、次の日、美術学校の門を叩いた。
その晩から、悪魔との戦いが始まった。美術学校で教わったあらゆるテクニックを駆使して、壁の悪魔の隣に、キリストの絵を描いては消し、消しては描いた。
その甲斐あって、壁の悪魔は少しずつ小さくなっていき、とうとう一週間目の夜、オレの全身全霊を込めて描いたキリストの前に、断末魔の悲鳴を上げて消え去った。
やれやれと思いながら、油性マジックで描いたキリストを、ベンジンで消そうとしたら消えなかった。
その晩、立体的に浮かび上がった壁のキリストが、賛美歌を歌い始めた。人間の前に現れるのは、二千年ぶりぐらいだろうから、何か話したくてウズウズしているはずだ。
オレは、はたしてキリストに弱点があるのかどうか考えた。
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