私の物語

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「だって……。 嫌いだなんて聞きたくない」 私がそういうと昌枝は泣き止んでキョトンとした顔をする。 私何か変なこと言ったかな? 「ち、違う! 私は嫌いだって言おうとしたんじゃなくて……ぎゃ、逆で……」 「逆……?」 嫌いの逆? いらき……? いや、そうじゃない、それってつまり……。 「好き……なの。気持ち悪いでしょ? だから聞きたくないって言ったんでしょ?」 私は唖然としてしまう。 何だろう、このすれ違い。 「気持ち悪くなんて、ない。だって、私もあんたが好きだし……」 両想いなのに勘違いして……。 私がそういうと昌枝は嬉しそうに顔をパーッと明るくしてすぐため息を吐く。 「あのタイミングであの雰囲気で言ったのに、どうしてそんな勘違いするかな……」 「私、ネガティブだし」 「だ、大体嫌いだったらこんなにいつも誘わないっつーの!」 「嫌いだからわざと迷惑かけてるって可能性が微粒子レベルで……」 「全く……。まぁ、そんな変なところも好きだけど」 いつもとは違ってもじもじしてる。 なんだか新鮮な可愛さがある。 「……好きだけど、私はひどく傷付いた! ばーかばーか、好きだけどばーか! 償え! き……キスで償え!」 んー、これはツンデレ? ツンツンしてるのに分かりやすいデレが混じってるよね。 と、というかキスって……。 「ここ道……」 「あー、香織は私が傷付いて鬱になってもいいんだー」 こいつは絶対鬱にはならない。 断言できる。 でもまぁ、しないと納得はしてくれないか。 「ここでじゃないとダメ?」 私の問いに頷く昌枝。 仕方ない、ここでしてあげよう。 今は幸い人がいない。 やっぱり心の準備は必要なわけで。 「かもーん、かおりん」 「ちょっとは心の準備をさせてよ!」 私は断れない人間だ。 自覚がある。 「うーん、不合格! もっかい!」 特に。 彼女に頼まれると、断れない。 「もう一回はいいけど、唐揚げの味がする」 「……ファーストキスは唐揚げ味?」 「軽くトラウマレベルだよ……」 そんな私の物語は、ここからまた始まる。
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