終わりと始まり

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「用件はなにかな?」 「貴方はもう、お分かりなのでしょう?」 「ご明察。」 六弦は懐から一枚の書類を取り出した。書類とペンを光に手渡した。書類の右端に六弦のサインが書かれている。 「M部隊への特例の入隊状だ。キミは力だけなら俺並だからな。書かれている事にすべて合意するならサインしてくれ。」 光は書類によく目を通した。向こうは自分の力を認めてくれている。あとはルールさえ守ればいい。すべては兄を救うため。光はサインを書いた。 「…覚悟、してるんだな。」 「兄のためなら、なんでも。」 「わかった。」 六弦は書類を受け取り、カウンターにいるセンゴクと何やら話をし、誰かと電話をし、光のもとに戻ってきた。 「今から所定の場所に行くんだ。そこで君の実力を量る。」 「わかりました。」 「案内はコロがつとめる。店の前で日向ぼっこしてるだろうから。」 光はすぐにコーヒーを飲み干してお代を払うと、店を出た。陽当たりのいい看板の上でコロが寝ている。 コロはミュータントドッグだ。人間並の知能を持ち、人間に変身する能力を持つ万能犬。京極家で飼われていたが今は巽家に居候している。暇な時はこうして店番をしている。 「コロちゃん。」 「くぁ~~。」 「ダメだ、完全に寝てるよ…ヒゲ引っ張ってやる。」 「ワフッ!?」 ヒゲを引っ張った拍子にコロが痛みで跳ね起き、人間の姿・犬鳴心に変身した。寝癖からか金髪がハネている。 「なにするんですか!人が寝てる時に!!」 「いや、心ちゃん犬だし…ってそうじゃなくて。ここ、案内してくれる?」 地図を見せると、大体察してくれたようで、コロは二つ返事で了解した。
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