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見慣れぬ天井。嗅ぎ慣れぬ匂い。感じ慣れない雰囲気。何もわからない、何も知らない空間で、巽翔は目を覚ました。
「目が覚めたようですね。」
「…寝覚めが悪いのは、お前のせいか。」
翔の目の前に、宿敵・綾瀬潤が立っている。どうやら今まで、何度も剣を交えた相手に看病されていたようだ。
潤は翔の右腕を掴み、包帯を取り替える。敵である彼女にこうされると、何故だか複雑でならない。
「なんです?」
「こちらが訊きたい。なぜお前は敵の俺を看る。」
潤は無言で翔の隣のベッドを指差した。そこには親友・桐生恭介の姿があった。
彼は最後に潤と戦った際に翔をかばい、瀕死の重傷を負った。翔はミュータントである自分の血液を彼に分け与え、ミュータントが持つ驚異的な回復能力での復活を試みた。
だが成功確率は極めて低く、失敗すれば死。更にミュータントから人間への輸血は、殺人罪と同義。だが翔は覚悟を決めて実行、結果、恭介は助かっていた。
「よかった…本当に…。」
「起こす?」
「頼む。」
すると潤は拡声器を取りだし、恭介の耳元で、とてつもなく大きな声で「あ!!!!」と叫んだ。
「ぎゃぁぁああああ!!」
「手荒すぎるだろう。」
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