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無理矢理たたき起こされた恭介は、両耳をおさえて部屋中をゴロゴロと転げまわる。
「ぬぉおお三半規管がぁぁあああ…。」
「そこまでの威力なのか…。」
「ってあれ?俺…生きてる?」
ためしに頬をつねってみる恭介。もちろん痛いに決まっている。そしてようやく恭介は生を実感した。
「俺が血を分けた。」
「翔…ありがとう。これで姉貴を泣かせずにすむ。それはそうと…。」
恭介は鋭い眼差しで潤を睨み付ける。だが潤は相変わらずの無表情で彼を見下ろす。
「何か?」
「なんで俺達を殺そうとしたヤツがいるんだよ。」
「俺達を看病してくれてもいた。ここは話を聞くべきだ。違うか、恭介。」
「お前がそー言うなら仕方ねー。話だけ聞いてやる。」
恭介が警戒を解いたことを確認すると、潤は置いてあったイスに腰掛けた。
「我々のマスターが貴方達をお呼びです。」
「ネメシスの首領さまが直々にか?ご苦労なこった。」
「ここはネメシスのアジトか。」
「そうね。だから私が案内をするよう言われています。」
「妙なマネはしない。連れていけ。」
潤は頷き、扉を開けて歩き出す。翔と恭介も彼女を追って歩き出す。ネメシスの組織員が命を賭けて忠誠を誓う存在。翔はその存在の器を量りたく思った。
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